【今すぐ使える】事業承継の相談先はどこがいい?特徴・強みを比較、会社の状況に合わせて解説
中小企業の経営者が、会社を後継者に任せたい、事業を誰かに引き継ぎたい、と考え始めた時、相談できるサポート役がいると心強いものです。
そんな時に頼りたい事業承継の相談先としては、税理士や弁護士、金融機関、事業承継・引継ぎ支援センター、M&A仲介会社などがあります。
ただ相談先の種類が多く、それぞれ役割や強みも違うため、事業オーナーの多くは
「違いがわからない」
「どこに相談したら良いかわからない」
といった印象を持つことも多いようです。当事務所がこれまで支援してきた経営者の方からも、こうした声が多く上がっていました。
そこで、この記事では事業承継の相談先について、専門家がどこよりもわかりやすくフラットな視点で解説します。最近、事業承継についての検討を始めたという方は、この記事を参考に相談先を見つけ、次のアクションにつなげてみてください。
【重要】事業承継の相談先探しの前の確認
事業承継について何を相談したい?
事業承継の相談先を解説する前に、重要なことがあります。それは事業オーナーのあなたが、今現在どんなステータスにあり、どんなことを相談したいかを明確にすることです。
事業紹介の相談先を紹介する多くのコンテンツは、経営者の状況を顧みず特徴などを並列的に説明しているものが目立ち、これが「結局どこに相談したら良いかわからない」という印象を持たせる原因になっています。
次の4つのうち、今経営者のあなたが考えていることに一番近いのはどれに当たるでしょうか?
- 事業承継について最近考え始めた(事業承継について幅広く情報収集がしたい)
- 事業承継の方法については知っている(どの方法が自社にふさわしいか知りたい)
- 親族内に後継者がいないので、別の方法を考えたい(従業員承継、M&Aについて聞きたい)
- 後継者候補はいるので具体的な進め方や承継方法が知りたい(親族内承継の進め方について知りたい)
会社によって事情や状況は様々であり、上記のように大きく分けた場合でも適した相談先は異なります。
以下では、事業承継の相談先の特徴や違い、強みなどを説明し、今上げたシチュエーション別の最適な相談先についても紹介していきます。すぐに自分に合った相談先を見つけたいという方は、続くパートを飛ばして「会社の状況ごとにおすすめの相談相手を解説」をご覧ください。
事業承継の相談先はなぜ重要なのか
自社の状況や相談したい内容に応じて適した相談先があることをお伝えしましたが、事業承継の相談先を間違えると
- 事業承継が成功する可能性が低くなる
- 最終的に支払う金額が大きくなる
という失敗にも繋がりかねません。
一例を挙げれば、M&Aに強い仲介会社に親族内承継の税制面での注意点を聞いたり、贈与に関する手続きに詳しい弁護士に第三者承継のマッチングを期待したりしても、当然のことながらうまくいかないケースもあります。
相談する相手によって特化しているポイントや強みは異なり、改めて別の相談先を探すようなことにならないよう、自社の状況に合った最適な相談先を見つけましょう。
※当事務所では事業承継の相談だけでなく、相談先についてのアドバイスやセカンドオピニオンも行っております。無料相談で対応していますので、お気軽にお問い合わせください。
事業承継の相談先一覧
ここからは事業承継についての相談先について具体的な利用シーンを交えて解説します。
相談先ごとの特徴を解説
事業承継の相談先として次の7つを紹介していきます。
- 金融機関
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 商工会議所
- 顧問の公認会計士・税理士
- 事業承継専門の税理士
- 弁護士や行政書士
- 事業承継コンサルティング会社
金融機関
企業が日頃から資金繰りなどで向き合い、接点のある金融機関は、近年事業承継の相談先の一つとなっています。
少し前になりますが、2016年に金融庁が公表した、金融仲介機能の評価指標「金融仲介機能のベンチマーク」では「事業承継支援先数」が1つの項目として採用され、事業承継に関する相談先として注力する姿勢が伺えます。
金融機関は担当者が自社の経営状況を把握しており、相談料や着手金がなくても経営や自社株の算定・評価についての相談ができるでしょう。
承継先の紹介まで繋げてくれるケースもありますが、事業承継の専門ではないため実務的な面は提携する他社が行ったり、承継先の選択肢が顧客先に限られたりすることがあります。
事業承継・引継ぎ支援センター
「事業承継・引継ぎ支援センター」は国が認定した支援機関が運営する事業承継についての相談窓口です。
全国47都道府県に窓口があり、親族内承継からM&Aまで中小企業の事業承継についての相談に幅広く対応しています。
回数に関わらず基本無料で相談できるため、気軽に利用しやすい相談先ですが、専門家による支援を受ける場合には別途料金が発生することがあるので注意が必要です。また、事業承継を専門にする仲介会社や税理士事務所と比べ、支援実績が少なくなっています。
商工会議所
各地の商工会・商工会議所でも中小企業の経営者向けに様々な支援を行っており、近年では事業承継に関するセミナーや相談会を行うケースも多くなっています。
商工会議所には税理士、公認会計士、弁護士、行政書士などの専門家が所属しており、地域に詳しい士業を相手に無料で相談できる点がメリットです。
利用には年会費を支払う必要があり、相談だけ無料で行うことはできないので注意が必要です。また相談できるのは専門家であるものの、事業承継についての専門性を持っているかは相手次第となります。
顧問の公認会計士・税理士
中小企業庁の調査で、経営者の事業承継についての相談先として一番多くなっているのが顧問の公認会計士・税理士です。
後継者が決まっている場合も、そうでない場合も相談先の一位として回答されており、事業承継を検討したオーナーが最初に相談する相手となっていることがわかります。
顧問の会計士や税理士であれば、会社の現状や財務状況について把握しており、将来の承継計画の策定や検討している方法に応じた税制対策についてアドバイスを受けることができます。
一方で、顧問の公認会計士・税理士は事業承継の専門ではないため、知識が十分でなく実施にあたって別の専門家のフォローを必要とするケースもあります。
事業承継専門の税理士
顧問以外で事業承継に特化した会計士や税理士などの専門家に、会社の引き継ぎについて相談するケースも増えています。こうした専門家の中には、他の相談先から受けたアドバイスとは別にセカンドオピニオンを受け付けているところもあります。
こうした会計士や税理士は事業承継についての専門家なので、幅広い相談内容に対応することが可能です。特にコンサル会社やM&A仲介会社が第三者承継の実績やノウハウに強みがあるのに対し、親族内承継や従業員承継についても的確なアドバイスが得られます。
事業承継を専門にした会計士・税理士は顧問から連携して繋がったり、当所のように事業承継専門を謳っている事務所を見つけたりして相談するのが一般的です。
弁護士や司法書士
会社で顧問を依頼している場合や、承継にあたってトラブルが発生した場合に弁護士などの法律の専門家に相談する経営者の方もいるようです。
事業承継にあたっては、ビジネス面や税制面だけでなく、株式の移譲や代表取締役の任命であれば会社法、贈与や相続であれば民法といったように法律面での手続きも必要になります。こうした点で込み入った問題が発生したような場合には、法律の専門家は頼れる相談先となるでしょう。
事業承継全般については専門外となるため、提携している専門家と協力したり、オーナーが自ら別に見つけたりすることになり、場合によっては費用が割高になることもあります。
コンサルティング・仲介会社
事業承継を専門に扱うコンサルティング会社は、事業承継について相談する際の有力な選択肢の一つです。
コンサルティング会社はこれまで説明していたような専門家と提携しており、経営者が相談先を探さなくてもコンサル会社の側で手配してくれるため、自ら手間をかけずに任せられる点がメリットです。
事業承継の実施までワンストップで担当が可能なためオーナーにとって頼れる相談先ですが、費用が高額になるケースがある、事業承継の方法として強みであるM&Aを優先した提案をされることがある、といった注意点もあります。
会社の状況ごとにおすすめの相談相手を解説
前章では事業承継についての相談先をまとめて紹介しましたが、「具体的に今すぐ相談するならどこだろう?」といった疑問を持った方も多いのではないでしょうか。
ここでは、記事の先頭で確認してもらった会社や事業承継の現状に合わせて、おすすめの相談先を説明したいと思います。
次の4つのうち、ご自身の会社の状況に一番近いのはどれかを念頭に置きながら、読み進めてみてください。
- 事業承継について最近考え始めた(事業承継について幅広く情報収集がしたい)
- 事業承継の方法については知っている(どの方法が自社にふさわしいか知りたい)
- 親族内に後継者がいないので、別の方法を考えたい(従業員承継、M&Aについて聞きたい)
- 後継者候補はいるので具体的な進め方や承継方法が知りたい(親族内承継の進め方について知りたい)
事業承継について最近考え始めた
自社の事業承継について検討を始めた段階で、幅広く情報収集がしたいという方は、まずは理解を深めたり、会社の現状について整理したりすることが最初のステップです。
そのため、
- 顧問の公認会計士・税理士
や無料で相談ができる
- 金融機関、事業承継・引継ぎ支援センター
- 商工会議所
- 事業承継専門の税理士
といった相手に相談するのがおすすめです。具体的な承継方法がイメージでき、次のステップに進める段階になった際に、それぞれの相談先が提携した専門家などに改めて話してみるといったこともできるでしょう。
事業承継の方法については知っている
親族内承継、従業員承継、M&Aという事業承継の3つの方法について理解した上で、具体的な次のアクションについて知りたい場合は、より専門性の高い相談先が相談相手として相応しいでしょう。
具体的には、
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 事業承継専門の税理士
- 事業承継コンサルティング会社
といった専門性が高い機関や事務所などを活用するのがオススメです。この段階でも、無料で利用できる選択肢は有効に使うのが賢い進め方ですが、特に事業承継専門の会計士・税理士の無料相談は、経営者の方にとってもメリットが大きいので相談の価値があるでしょう。
後継者候補はいるので具体的な進め方や承継方法が知りたい
すでに後継者候補として考えている人材がいる場合は、ビジネス面、法律面、税制面で実際に事業承継を進めるためのサポートを行ってくれる相手に相談するのが良いでしょう。
具体的には
- 事業承継専門の税理士
- 弁護士や行政書士
- 事業承継コンサルティング会社
といった先が考えられます。法律の専門家はそれ以外の面での別の支援が必要、コンサルティング会社は親族内承継や従業員承継についての実務的なノウハウが十分でない場合がある、といったことから豊富な実績がある事業承継専門の税理士は頼れる相談先になるでしょう。
親族内に後継者がいないので、別の方法を考えたい
親族の中に会社を任せられる人材がいない場合には、従業員承継、M&A(第三者承継)を検討していくことになります。
こうしたケースでは
- 事業承継専門の税理士
- 事業承継コンサルティング会社
が信頼できる相談先になります。特にM&Aの実績が豊富でマッチング成功事例も多いコンサルティング会社は真っ先に考えるべき相談相手になるでしょう。
一方で、かかる費用が大きくなる可能性があるため、比較的小さい規模の中小企業であればセカンドオピニオン的に事業承継専門の税理士を活用しつつ、金額面や専門性に応じて相談後の実際の依頼先を検討すると良いかもしれません。
おわりに
ここまでに説明した通り、事業承継の相談先としては、税理士や弁護士、金融機関、事業承継・引継ぎ支援センター、M&A仲介会社などがあります。
もしも経営者が会社の引き継ぎについて最初に相談する先を間違えると、
- 事業承継が成功する可能性が低くなる
- 最終的に支払う金額が大きくなる
といった失敗が起こりうることにも先に触れた通りです。そのため、情報収集がしたいのか、事業承継の方法が知りたいのか、など自社のシチュエーションに合わせて説明する先を検討する必要があります。
今回の記事を参考に安定した経営基盤のもと次の世代に引き継げるよう、早めに準備を進めていきましょう。
大山公認会計士事務所では、事業承継についての質問、相談に初回無料で対応しております。気になる点ことがあればお気軽にお知らせください。