事業承継の進め方が全てわかる!準備から計画策定、実行まで解説
「そろそろ自分が経営から離れた後に会社をどうするか考えたい」
「事業承継を考え始めたのだが、最初に何からするべきだろうか」
こんな風に考えて、この記事に辿り着いた方が多いと思います。ご存知の通り、日本の中小企業では経営者の高齢化が進んでいます。
帝国データバンクの2023年の調査によると、全国・全業種で後継者不在率は 53.9%となり、足元での改善傾向が見られるものの、依然として過半数の企業が後継者問題を抱えています。
こうした状況において、円滑な事業承継を実現できるかどうかは、企業の存続に大きな影響を与える避けては通れない経営課題となっています。ただ、多くの経営者にとって事業承継は初めての経験であり、そのため冒頭のような悩みを持つ方が多いのも自然なことでしょう。
このコンテンツでは、事業承継を検討している経営者の方々に向けて、事業承継を専門に支援する会計士・税理士が、実際の事業承継の流れや具体的な進め方のステップ、注意点、利用可能な支援策まで網羅的に説明しています。
事業承継について情報収集を通して、スムーズで適切な承継を実現したいという経営者の方のニーズに合わせた内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
事業承継とは
事業承継とは何か
事業承継とは、あなたが経営する会社を後継者に引き継ぐことを指します。単に経営権を譲り渡すだけでなく、会社の資産や人脈など有形無形の様々なものを次の経営者に承継することを意味します。
具体的には、経営権(自社株、事業用資産、許認可、知的財産など)、人的資産(従業員、経営ノウハウ、人脈など) 、経営理念などを承継することをいいます。
事業承継の目的は、単に経営者を交代することではありません。会社の理念や価値観を維持・発展させながら、企業の持続的な成長と発展を実現することが本当の目的です。つまり事業承継は目指すべきゴールではなく、会社の継続的な成長の手段や通過点として考えることもできるでしょう。
事業承継の3つの方法
事業承継には、主に以下の3つの方法があります。
- 親族内承継: 経営者の子供や配偶者、兄弟姉妹などの親族に事業を引き継ぐ方法です。
- 社内承継(従業員承継): 会社の役員や従業員に事業を引き継ぐ方法です。
- M&A(第三者承継): 社外の第三者に会社や事業を譲渡する方法です。
それぞれの承継方法にはメリットとデメリットがあり、会社の状況や経営者の意向によって最適な方法は異なります。
事業承継の3つの方法については、別の記事でも詳しく解説していますので、気になる方はそちらをご確認ください。
事業承継の方法はどう決める?
「親族内承継」「社内承継」「第三者承継(M&A)」からどの方法を選択するかは、後継者候補の有無、経営者の意向、会社の状況などによって変わってきます。ここでは、事業承継の方法を決めるための考え方について、親族内承継、社内承継、第三者承継の順に説明します。
① 親族内承継を検討する
一般的に、事業継承を考え始めたときに多くの経営者の方は、親族内に後継者候補がいるかどうかを確認します。息子や娘、甥や姪など、親族の中に「後継者になってもらいたい」と思える人物がいるでしょうか。
親族内に後継者候補がいる場合、その人に経営者としての資質があるかどうかを見極める必要があります。後継者候補本人に会社を継ぐ意思があるかどうかも重要なポイントです。
親族内承継は、以前は最も多く見られた継承方法でしたが、後継者不足、後継者候補が会社を継ぎたがらない、といった理由から近年はその割合を下げています。
② 社内承継(従業員承継)を検討する
親族内に後継者候補がいない、もしくは、親族内に後継者候補はいるものの本人に継ぐ意思がない、または経営者としての資質に不安がある場合、社内に経営を任せられる役員や従業員がいるかどうかを検討するケースも多くみられます。
社内承継の場合、後継者は既に自社の業務内容や経営方針を理解しているため、事業承継をスムーズに進められると言われていますが、後継者による株式の取得(買い取り)が課題となるケースが多くあります。
③ 第三者承継(M&A)を検討する
親族内にも社内にも後継者候補がいない場合、または、後継者候補はいるものの、株式の取得資金などの課題をクリアするのが難しい場合は、M&Aによる第三者承継を検討します。
M&Aには、会社を売却することで経営責任の解消や、創業者利益の獲得といったメリットがある一方、希望する条件に合う買い手企業が見つからない可能性があるといったデメリットもあります。
このように、自社の状況、経営者の意向、後継者候補の意思などを総合的に考慮して、最適な承継方法を選択していくことになります。最終的にどの方法で引き継ぐにせよ、十分な準備期間を設けて、計画的に事業承継を進めることが成功の鍵となります。
事業承継の進め方についてのよくある質問
事業承継の進め方の解説に入る前に、まず多くの経営者が抱える質問とその回答を紹介します。詳しい説明は後の章で行いますので、まずはざっくりとした事業承継の進め方のイメージをつかんでみてください。
Q1. 事業承継を円滑に進めるためのステップはどのようなものか?
A1. 事業承継を円滑に進めるためには、以下の5つのステップで進めることが重要です。
- 事業承継の準備の必要性を理解する
- 経営状況・経営課題等の把握(見える化)
- 事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
- 事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)、またはM&Aなどの工程の実施(社外への引継ぎの場合)
- 事業承継の実行、または、M&Aの実行
これらのステップを踏まえ、自社の現状を把握し、課題を解決しながら、計画的に事業承継を進めることが大切です。詳しくは3章で詳しく解説します。
Q2. 事業承継を始める最適なタイミングはいつか?
A2. 事業承継の準備から完了までには、一般的に5年から10年の期間が必要とされています。そのため、経営者が60歳を迎える頃を目安に、事業承継の準備を始めるのが理想的です。
後継者の育成、経営課題の解決、事業承継計画の策定など、事業承継を円滑に進めるためには、中長期的な視点に立った計画的な準備が欠かせません。ただし、事業承継を始めるタイミングは、経営者の年齢だけでなく、後継者の状況や会社の経営状態なども考慮して総合的に判断する必要があります。
この点については4章で詳しく説明します。
Q3. 事業承継を考え始めたばかりの経営者が、最初にすべきことは何ですか?
A3. まずは、事業承継の必要性を認識し、自社の現状を把握することから始めましょう。その上で、事業承継に関する情報収集を行い、事業承継の全体像や進め方を理解することが重要です。「いつかは事業承継をしなければならない」という漠然とした考えではなく、「なぜ事業承継が必要なのか」「事業承継をすることで、どのようなメリットがあるのか」を明確にすることで、実際のアクションに繋げていくことができます。
その上で、自社の経営状況や後継者候補の状況などを把握し、事業承継に向けてどのような準備が必要なのかを考えていくことになります。まずは、できることから少しずつ準備を進めていくことが大切です。具体的な進め方については、3章を参考にしてください。
Q4. 事業承継の準備をしている中で、多くの人が苦労する点は何ですか?
A4. 多くの経営者が、後継者の選定・育成、そして経営者自身の「引退」の決心に苦労しています。
後継者選びは、単に能力だけでなく、経営理念の理解や人柄、従業員との相性など、様々な要素を考慮する必要があるため、簡単な決断ではなく、経営者の負担になるケースをよく目にします。また、後継者育成に苦労したり、経営者が第一線から退くことを決めるのに時間がかかったりする例もあります。
これらの課題を乗り越えるためには、早期から事業承継の準備に着手し、後継者と十分に話し合い、専門家の助けを借りながら、計画的に準備を進めていくことが重要です。
事業承継の進め方を「5つのステップ」で解説
ここでは、事業承継の進め方を5つのステップに分けて、具体的に解説していきます。中小企業庁が公表している「事業承継ガイドライン」を参考に、事業承継をスムーズに進めるための手順を説明します。
ステップ1: 事業承継に向けた準備の必要性の認識
まず、経営者自身が事業承継の必要性をしっかりと認識することが重要です。事業承継は、単なる名義変更といった話ではなく、会社の将来を左右する重要な経営課題です。後継者の育成や経営課題の解決には時間がかかるため、中長期的な視点で計画的に取り組む必要があることを意識しましょう。
「まだ先のこと」と考えている経営者の方もいるかもしれません。しかし、経済産業省の試算によると、2025年までに、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人が後継者未定とされています。
後継者不在は、事業の存続を危うくする重大な問題です。事業承継の準備は、5年~10年かかるのが一般的。事業承継はまだ先のことではなく「事業承継は今から準備すべきこと」と認識を改めることが、事業承継を成功させるための第一歩と言えるかもしれません。
ステップ2: 経営状況・経営課題等の把握(見える化)
次に、自社の現状を客観的に把握し、経営課題を明確にします。具体的には、以下の項目について、現状を分析・把握しましょう。現状を「見える化」することで、自社の強みや弱みが明確になり、事業承継を円滑に進めるための土台作りができるようになります。
- 資産・負債の状況: 貸借対照表(バランスシート)を分析し、自社の資産と負債の状況を把握します。特に、簿外債務や不良資産の有無は、事業承継に大きな影響を与えるため、注意深く確認する必要があります。実態ベースのバランスシートに落とし込む、というイメージです。
- 事業の強み・弱み: 自社の強み・弱みを、技術力、販売力、組織力などの観点から分析します。いわゆるSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威の分析)などのフレームワークを活用するのも有効です。
- 財務状況: 損益計算書やキャッシュフロー計算書を分析し、自社の収益性や資金繰りの状況を把握します。過去数年分の推移を見ることで、自社の稼ぐ力を客観的に見ることができます。
- 経営課題: 上記の分析結果を踏まえ、事業承継に向けて解決すべき経営課題を洗い出します。例えば、後継者育成、財務体質の改善、事業の選択と集中などが挙げられます。
これらの分析を通じて、自社の現状を「見える化」することで、事業承継に向けて取り組むべき課題が明確になります。
ステップ3: 事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
ステップ2で明確になった経営課題を解決するために、事業承継に向けた経営改善、いわゆる「磨き上げ」を実行します。
事業を磨き上げることで、後継者が引き継ぎやすい環境を整えるだけでなく、M&Aによる事業承継を検討している場合には、企業価値向上にもつながります。具体的な取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 収益力の向上: 売上拡大、コスト削減、生産性向上など、収益力を高めるための施策を実行します。例えば、新商品の開発、販路の拡大、業務の見直しによるコスト削減などが考えられます。
- 財務体質の強化: 借入金の返済、遊休資産の売却など、財務体質を強化するための施策を実行します。財務基盤を強化することで、金融機関からの信頼が高まり、事業承継後の資金調達がスムーズになります。
- 経営組織の整備: 経営理念の明確化、組織体制の見直し、業務の効率化など、経営組織を整備します。特に、属人化された業務(特定の社員しかできない仕事)を洗い出し、マニュアルを作成するなどして標準化することで、事業の引継ぎをスムーズに行うことができます。
- 後継者教育: 後継者に対して、経営に関する知識やノウハウを教育します。経営塾に通ったり、社外での経験を積ませるなど、計画的に後継者を育成しましょう。
これらの経営改善を通じて、会社の企業価値を高め、後継者が引き継ぎやすい環境を整えることが重要です。
ステップ4: 事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)、またはM&Aなどの工程の実施(社外への引継ぎの場合)
親族内承継や従業員承継の場合は、事業承継計画を策定します。事業承継計画とは、事業承継の時期や方法、スケジュールなどを具体的に定めた計画書です。計画書には、以下の項目を盛り込むことが一般的です。
- 事業承継の時期: いつまでに事業承継を完了させるのか、具体的な時期を設定します。
- 後継者: 誰を後継者とするのか、後継者の氏名や役職などを記載します。
- 事業承継の方法: 株式の譲渡方法や経営権の移譲時期など、具体的な承継方法を定めます。
- 資産の承継: 株式や事業用資産などをどのように後継者に承継するのかを定めます。
- スケジュール: 事業承継の準備から実行までのスケジュールを、具体的なタスクごとに作成します。
- 相続税・贈与税対策: 事業承継に伴う税金対策について記載します。
一方、社外への引継ぎ、つまりM&Aを選択する場合は、以下のような工程を実施します。
- M&A仲介会社等の選定
- 企業概要書(IM)の作成
- 譲受候補企業とのマッチング
- 条件交渉
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンス(買収監査)
- 最終契約書の締結
- クロージング(資金決済、経営権の移転)
事業承継計画やM&Aの工程は、自社だけで作成・実施するのは容易ではありません。税理士や公認会計士、弁護士、事業承継・引継ぎ支援センターなどの専門家に相談しながら、進めることをお勧めします。
ステップ5: 事業承継の実行、または、M&Aの実行
策定した事業承継計画、または、M&Aの工程に基づき、事業承継を実行します。具体的には、株式や事業用資産の移転、経営権の移譲などを行います。
事業承継の実行にあたっては、計画通りに進まないことも想定されます。そのため、定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて計画を修正しながら、柔軟に対応することが重要です。また、事業承継後も後継者がスムーズに経営を行えるよう、一定期間はサポートを続けることも大切です。
事業承継を進める上での注意点
この章では、事業承継を成功させるために注意すべき点について、専門家の観点から解説します。
事業承継は早めの準備が大切
前述の通り、事業承継の準備には、5年から10年の期間が必要とされています。後継者の育成や経営課題の解決には、時間と労力がかかるため、「まだ先のこと」と後回しにせず、早めに準備に着手することが重要です。
特に、経営者の年齢が60歳を超えている場合は、健康上のリスクなども考慮し、できるだけ早く事業承継の準備を始めることをお勧めします。
現在の経営者であるあなたが、いつまでも万全の状態で事業承継の意思決定ができるとは限りません。例えば、事業承継の準備が進まないうちに経営者の認知症が進み、家族が後継者争いを繰り広げる、といったケースはドラマの中の話ではありません。今すぐに会社を引き継ぐ予定はなくても、できる準備は余裕を持って進めておきましょう。
専門家との連携も検討を
事業承継には、法律、税務、財務など、様々な専門知識が必要となります。そのため、自社だけで事業承継を進めるのではなく、外部の専門家と連携することも検討しましょう。
事業承継の相談先としては、以下のような専門家が挙げられます。
- 税理士・公認会計士: 事業承継に伴う税務対策や、財務状況の分析などを依頼できます。
- 弁護士: 事業承継に関する法的手続きや、契約書の作成などを依頼できます。
- 中小企業診断士: 経営改善や事業承継計画の策定などを依頼できます。
- 金融機関: 事業承継に伴う融資や、M&Aの相談などができます。
- 事業承継・引継ぎ支援センター: 事業承継に関する総合的な支援を受けることができます。
- M&A仲介会社: M&Aを検討している場合、相手先探しから交渉までをサポートしてくれます。
これらの専門家は、それぞれ得意分野が異なります。自社の状況やニーズに合わせて、適切な専門家を選ぶことが重要です。また、複数の専門家にセカンドオピニオンを求めることも有効です。
事業承継の相談先については、こちらの記事も参考にしてください。
従業員や取引先への配慮
事業承継は、従業員や取引先など、多くのステークホルダーに影響を与えます。そのため、事業承継を進める際には、これらのステークホルダーへの配慮も欠かせません。
例えば、従業員に対しては、事業承継の目的や方針、今後の処遇などについて、丁寧に説明し、不安を解消することが重要です。また、取引先に対しては、事業承継後も安定した取引を継続できることを伝え、信頼関係を維持するよう努めましょう。
事業承継に関する情報を、適切なタイミングで、適切な方法で、ステークホルダーに伝えることが、事業承継を円滑に進めるためのポイントです。
承継後の体制を整備する
事業承継は、後継者が経営を引き継いで終わりではありません。後継者がスムーズに経営を行えるように、事業承継後の体制やオペレーションを整えておくことも重要です。
具体的には、後継者の補佐役となる人材の配置、業務の引継ぎマニュアルの作成、後継者への権限委譲などを、計画的に進める必要があります。
また、現経営者が、事業承継後も一定期間は相談役として会社に残ることで、後継者をサポートするのも一つの方法です。
事業承継におけるリスクマネジメント
事業承継には、様々なリスクが伴います。例えば、後継者の経営能力不足、従業員の反発、取引先との関係悪化、資金繰りの悪化などが考えられます。これらのリスクを事前に想定し、対策を講じておくことが重要です。
具体的には、以下のような対策が考えられます。
- 後継者の経営能力不足: 後継者に対して、十分な教育・研修を実施する。必要に応じて、外部の専門家をアドバイザーとして迎え入れる。
- 従業員の反発: 事業承継の目的や方針について、従業員に丁寧に説明し、理解を得る。従業員の意見にも耳を傾け、不安や不満を解消する。
- 取引先との関係悪化: 事業承継後も、取引先との良好な関係を維持できるよう、後継者と取引先との関係構築を支援する。
- 資金繰りの悪化: 事業承継に伴う資金需要を事前に把握し、必要な資金を確保する。金融機関からの融資や、事業承継・引継ぎ補助金などの活用を検討する。
事業承継は、多くの時間と労力を要する大仕事です。様々なリスクを想定し、事前に対策を講じておくことで、事業承継を成功に導くことができるでしょう。
知っておきたい事業承継の支援策
事業承継を円滑に進めるためには、国や自治体の支援策を活用することが有効です。ここでは、代表的な支援策を簡潔にご紹介します。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継やM&Aに取り組む中小企業を支援する補助金で、「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」の3つの枠組みがあります。
- 経営革新: 後継者による設備投資などの経費を補助。
- 補助上限:原則600万円(従業員の賃上げ等で800万円)
- 補助率:1/2(デジタル化や賃上げを実施すると2/3)
- 専門家活用: M&Aに係る専門家への依頼費用を補助(買い手・売り手双方が対象)。
- 補助上限:250万円(買い手で最大450万円の場合もあり)
- 補助率:1/2
- 廃業・再チャレンジ: 廃業を伴う事業承継やM&Aにかかる費用を補助。
- 補助上限:150万円
- 補助率:1/2
補助金の内容は年度ごとに変更されるため、最新の公募要領を確認することが重要です。また、審査があり、必ず採択されるとは限らない点に注意しましょう。
事業承継税制
後継者が取得した非上場株式や事業用資産に係る相続税・贈与税の納税を猶予・免除する制度です。法人版と個人版があり、いずれも「特例承継計画」を都道府県知事に提出し、確認を受ける必要があります(提出期限:令和8年3月31日)。
- 法人版: 後継者が取得した非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税が猶予され、後継者の死亡等で免除。
- 個人版: 後継者が取得した事業用資産に係る相続税・贈与税の納税が猶予され、後継者の死亡等で免除。
ただし、要件を満たさないと納税猶予が打ち切られ、利子税が発生するリスクがあるため、税理士や認定経営革新等支援機関に相談することをお勧めします。
経営者保証ガイドラインの活用
「経営者保証に関するガイドライン」は、経営者保証に依存しない融資を促す指針です。事業承継では、後継者が現経営者の保証を引き継がない、または解除したい場合に検討されます。
- ガイドラインは法的拘束力を持たないため、金融機関との交渉が必要です。
- 取引金融機関や商工会・商工会議所の相談窓口を活用し、保証解除の可能性を探りましょう。
令和6年4月からは、信用保証協会の保証制度が見直され、経営者保証に依存しない融資がさらに推進される予定です。
その他の支援策
- 事業承継・引継ぎ支援センター: 事業承継の総合相談窓口。M&Aマッチング支援も実施。
- よろず支援拠点: 中小企業の経営相談窓口。事業承継の相談にも対応。
- 商工会・商工会議所: 地域の中小企業支援団体。事業承継セミナーや個別相談を実施。
- 認定経営革新等支援機関: 事業承継計画の策定や金融機関との交渉をサポート。
これらの支援策を活用し、円滑な事業承継を実現しましょう。最新情報は各窓口や公式サイトで確認することをお勧めします。
このように、事業承継には多様な支援策が用意されています。専門家の助言を受けながら、自社に適した制度を活用することが成功のカギです。
まとめ
事業承継は、会社の将来を左右する重要な経営課題です。この記事では、事業承継の進め方について、5つのステップを中心に、注意点、支援策などを解説しました。
事業承継を成功させるためには、「事業承継の必要性を認識する」「現状を把握し、課題を明確にする」「事業承継計画を策定し、計画的に実行する」「早めに準備に着手する」「専門家や支援機関を有効に活用する」ことが重要です。
事業承継は、経営者や後継者だけでなく、従業員や取引先など、多くの関係者に影響を与えます。この記事を参考に、関係者と十分に話し合い、協力しながら、自社に適した事業承継を実現していただければと思います。
事業承継についてお悩みの経営者の方は、まずは専門家に相談することをお勧めします。また当事務所でも事業承継に関する無料相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。